本章では図1に示した行動のうち,意思決定の支援を取り上げ る.消費者は情報を収集し,それを理詰めに,あるいは各種ヒューリスティッ クスを用いて評価し,集めた候補の中から実際に行動を起こす対象を選択する.
ここで消費者は評価/選択の段階では意思決定を行う根拠となる材料には次の ようなものがあると考えられる.
1番目のメタ情報は,欲しい情報があるのか,ないのか,ある場合の量はなど の対象の客観的な情報である.残りの2つは主観的な情報で,個人の内なるも のと外なるものに分けられる.すなわち本研究の目的は,上記3要素をモーバ イル環境下でどのような内容で,どのような方法で提供/処理するかと言い替 えることもできる(図3).
前章で述べた位置指向の情報検索を行って,現在地付近の情報が得られるが, 対象のメタ情報も同様の課題としてとらえられる.
3番目の流行情報であるが,現在地周辺の情報が得られたユーザは,他者の意 見や流行,風潮などの主観情報を意思決定に利用したい可能性がある.この場 合はまず誰に聞くのかが問題になる.友人に聞く,土地の人間に聞く,雑誌に 聞く,いずれにしても全く知らない相手に判断を求めることは少ないだろう. 自分と相手との関連が明確であることが必要である.この関係をコミュニティー と呼ぶことにする.主観情報を使う時は,まずコミュニティーを探し,次にそ こから主観情報を取り出す.これについて6章で「Action Navigator」を紹介する.
残った2番目の意思決定根拠の個人情報であるが,これはユーザの内部に存在 するものなので,支援の程度により必要度が違う.支援システム側で最終的な 判断まで行う場合には必要である.また,判断までは行わないまでもシステム 側がある程度の絞り込みをする必要がある場合(例えばプッシュ型サービス)で も必要になる.本論文では個人情報の扱いに関しては述べない.文献 [5]を参照していただきたい.